スマートフォンを選ぶとき、「Motorola(モトローラ)ってどこの国のメーカー?」と疑問に思ったことはありませんか。コスパの良さで人気のMotorolaですが、実は創業からの歴史の中で所有する企業が大きく変わっています。
結論から言うと、Motorolaは元々アメリカで創業された老舗通信機器メーカーですが、現在は中国のLenovo(レノボ)グループの傘下にあります。
この記事では、Motorolaの国籍が変わった複雑な経緯から、GoogleやLenovoとの関係、スマートフォンの製造国、そして気になる安全性まで詳しく解説します。購入を検討している方も、すでに使っている方も、Motorolaについて正しく理解できる内容となっています。
Motorolaはどこの国の企業?結論から解説

まず、多くの人が気になる「Motorolaはどこの国の企業なのか」という疑問に、結論からお答えします。
現在は中国Lenovoの傘下
現在、Motorolaは中国のPC大手企業であるLenovo(レノボ)グループの完全子会社として運営されています。
2014年にLenovoがGoogleからMotorola Mobilityを約29億ドルで買収したことにより、中国企業の傘下となりました。そのため、企業の所有権という観点では「中国企業の一部」と言えるでしょう。
ただし、Motorola Mobilityの本社は現在もアメリカ・イリノイ州シカゴにあり、米国法人として運営されているという特徴があります。また、日本国内には「モトローラ・モビリティ・ジャパン合同会社」という法人が存在し、製品のサポート体制も整っています。
元々はアメリカの老舗通信機器メーカー
一方で、Motorolaのルーツを辿ると、1928年にアメリカ・シカゴで創業された純粋なアメリカ企業でした。
創業当初は「ガルビン・マニュファクチャリング・コーポレーション」という社名で、カーラジオの製造からスタートしました。その後、世界初の携帯電話を開発するなど、通信技術の分野で数々のイノベーションを起こしてきた歴史ある企業です。
つまり、Motorolaはアメリカで生まれ育った名門ブランドが、現在は中国企業の傘下で事業を継続しているという複雑な立ち位置にあるのです。
Motorolaの歴史:アメリカ発祥から現在までの変遷
Motorolaがどのような道のりを歩んできたのか、その歴史を詳しく見ていきましょう。
1928年創業のアメリカ企業として誕生
Motorolaの歴史は、1928年にポール・ガルビンとジョセフ・ガルビンの兄弟がイリノイ州シカゴで「ガルビン・マニュファクチャリング・コーポレーション」を設立したことから始まります。
最初は家庭用ラジオや電池の製造を手掛けていた小規模な企業でしたが、1930年に世界初のカーラジオを開発し、大きな成功を収めました。この製品に「Motorola」というブランド名を付けたのです。
「Motorola」という名前の由来は、自動車を意味する「Motor」と、音を意味する「ola」を組み合わせた造語です。カーラジオという革新的な製品にふさわしい、印象的なネーミングでした。
その後、1947年に社名を正式に「Motorola, Inc.」に変更し、通信機器分野での技術開発に力を注いでいきます。半導体事業にも参入し、1950年代からはトランジスタやマイクロプロセッサの製造でも知られるようになりました。
携帯電話業界のパイオニアとしての功績
Motorolaが世界的に注目を集めたのは、1983年に世界初の商用携帯電話「DynaTAC 8000X」を開発したことです。
この携帯電話は重さ約790グラム、価格も非常に高額でしたが、携帯電話という新しい通信の形を世界に示した画期的な製品でした。1989年には日本市場にも参入し、NTTが独占していた移動電話市場に風穴を開けました。
1990年代後半まで、Motorolaは世界最大の携帯電話メーカーとして君臨していました。2004年に発売された薄型携帯電話「RAZR」シリーズは大ヒットを記録し、派生モデルを含めて3年間で約7,500万台を販売するという快挙を成し遂げています。
このように、Motorolaは携帯電話の歴史そのものを作ってきた企業といっても過言ではありません。
経営難による分社化と事業売却
しかし、2000年代後半に入ると状況が一変します。
2007年にAppleがiPhoneを発表し、スマートフォン時代が到来すると、Motorolaはこの変化に対応できず、市場シェアを急速に失っていきました。1998年にはノキアに首位を奪われ、2008年には携帯電話市場シェアで4位にまで転落していたのです。
経営不振に陥ったMotorolaは、2011年1月4日に企業を2つに分割する決断を下します。
| 分社化後の企業 | 事業内容 | その後 |
|---|---|---|
| Motorola Solutions | 法人向け通信機器・インフラ事業 | 現在も独立企業として存続 |
| Motorola Mobility | 携帯電話・スマートフォン事業 | 2011年にGoogleが買収、2014年にLenovoへ売却 |
この分社化により、携帯電話事業は「Motorola Mobility」として独立し、新たな道を歩むことになったのです。
GoogleによるMotorola買収とLenovoへの売却の経緯

Motorola Mobilityの所有権は、わずか数年の間に大きく変動しました。その複雑な経緯を見ていきましょう。
2011年にGoogleがMotorola Mobilityを買収
2011年8月15日、GoogleはMotorola Mobilityを約125億ドル(当時のレートで約9,600億円)という巨額で買収すると発表しました。
この買収は業界に大きな衝撃を与えました。なぜなら、AndroidというOSを提供するGoogleが、ハードウェアメーカーを直接所有することになるからです。他のAndroid端末メーカーからは警戒の声も上がりました。
では、なぜGoogleはこれほど高額でMotorolaを買収したのでしょうか。
最大の理由は「特許の取得」でした。 当時、GoogleのAndroidは、AppleやMicrosoftなどから特許侵害訴訟を多数起こされており、法的な防衛手段が必要だったのです。Motorolaが保有していた約17,000件の無線通信関連の特許は、Androidエコシステムを守るための「盾」として非常に価値がありました。
Googleのラリー・ペイジCEOは当時、「Motorolaの買収でGoogleの特許ポートフォリオが強化されることで、Microsoft、Appleその他の企業からの反競争的脅威からAndroidをより強く守れるようになる」とコメントしています。
つまり、Googleの主な目的は携帯電話事業そのものではなく、特許という知的財産の獲得だったのです。
2014年にLenovoへ売却された理由
Googleによる買収からわずか2年半後の2014年1月29日、今度はGoogleがMotorola MobilityをLenovoに約29億ドルで売却すると発表しました。
買収時の125億ドルから大幅に値下がりした金額での売却となりましたが、これにはいくつかの理由があります。
まず、Googleは買収当初から「ハードウェア事業を本格的に展開する意図はない」と明言していました。実際、買収後もMotorola Mobilityは独立した事業として運営され、Googleは他のAndroid端末メーカーとの公平性を保つことに腐心していました。
加えて、Googleが本当に必要としていた特許の大半はGoogleが保持したまま、約2,000件の特許使用権とともにハードウェア事業だけをLenovoに売却したのです。
つまり、Googleにとって目的は達成され、ハードウェア事業は不要になったという判断だったと考えられます。セットトップボックス事業も2012年に別企業へ売却しており、段階的に事業を整理していたことがわかります。
なぜ中国企業の傘下になったのか
一方、買い手となったLenovoにとって、この買収は大きな意味がありました。
Lenovoは2004年にIBMのPC事業を買収して世界的なPCメーカーとなりましたが、スマートフォン市場では中国国内が中心で、欧米などの成熟市場への参入が課題でした。
Motorolaというアメリカの名門ブランドと、そのグローバルな販売網、製品開発力を手に入れることで、Lenovoは一気に世界市場でのプレゼンスを高めることができたのです。
Lenovoにとっては、PC事業で成功した買収戦略をスマートフォン分野でも再現する絶好の機会だったといえるでしょう。実際、2015年以降、LenovoはスマートフォンブランドをMotorola一本に統合し、同ブランドを中核として展開しています。
このように、Googleの「特許が欲しい」という需要と、Lenovoの「グローバル展開したい」という需要が一致した結果、Motorolaは中国企業の傘下に入ることになったのです。
Motorolaスマホの製造国はどこ?生産拠点を調査
企業の所有権だけでなく、実際にスマートフォンがどこで製造されているかも気になるポイントです。
主な製造国と生産体制
現在、Motorolaのスマートフォンは主に中国の工場で製造されています。
Lenovo傘下となったことで、Lenovoが持つ中国国内の製造ネットワークやサプライチェーンを活用できるようになりました。これにより、コストを抑えながら効率的な生産体制を構築しています。
ただし、中国以外にも生産拠点は存在します。近年では、人件費の上昇などを背景に、インドやベトナムなど他のアジア諸国にも製造拠点を分散させる動きが見られます。
特にインド市場向けの製品は、インド国内で製造されるケースも増えています。これは、インド政府の製造業振興策や関税の関係で、現地生産が有利になっているためです。
製品の設計や開発については、アメリカのシカゴにある本社を含む複数の拠点で行われており、純粋な「中国製品」とは言い切れない側面もあります。グローバル企業として、世界各地のリソースを活用した製品作りが行われているのです。
日本で販売されているモデルの製造国
日本市場で販売されているMotorolaのスマートフォンも、多くは中国で製造されたものです。
ただし、製造国は時期や市場の状況によって変わる可能性があるため、正確な情報を知りたい場合は製品のパッケージや公式サイトで確認することをおすすめします。
重要なのは、製造国だけで製品の品質を判断するのではなく、品質管理体制やサポート体制も含めて総合的に評価することです。Motorolaは長年の技術蓄積があり、Lenovoグループとしての品質管理基準に基づいて製造されているため、製造国にかかわらず一定の品質は保たれています。
また、日本で販売される製品はすべて技適マークを取得しており、日本の電波法に適合していることが保証されています。この点も確認すべきポイントの一つといえるでしょう。
Motorolaスマホの品質と安全性について

最も気になるのは、やはり安全性の問題ではないでしょうか。中国企業傘下ということで不安を感じる方もいるかもしれません。
Lenovoグループとしての品質管理体制
Lenovoは世界的なPC・デバイスメーカーとして長年の実績があり、品質管理には厳格な基準を設けています。
Motorolaのスマートフォンも、Lenovoグループの品質管理体制のもとで製造されており、国際的な品質基準を満たしています。Lenovoは2004年のIBM PC事業買収以来、ThinkPadブランドの高い品質を維持してきた実績もあり、品質管理のノウハウは十分に蓄積されています。
また、Motorolaの製品はピュアAndroid(素のAndroid OS)に近い形で提供されることが特徴です。独自のカスタマイズを最小限に抑えることで、Googleが提供するセキュリティアップデートを適用しやすい体制になっています。
Motorolaは定期的にセキュリティパッチを配信しており、Googleおよびサードパーティがリリースするセキュリティ修正を取り込んでいます。具体的な更新頻度やサポート期間については、公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。
セキュリティ面での懸念と実態
中国企業傘下であることから、データの取り扱いやセキュリティについて懸念を持つ方もいるでしょう。
事実として押さえておくべき点は以下の通りです:
- Motorola製品は、米国政府が安全保障上の懸念から取引を制限している中国企業のリストには含まれていません(ただし、これは安全性を保証するものではなく、政治的・外交的な判断の結果です)
- Motorola Mobilityの本社はアメリカにあり、米国法人として米国の法律に準拠した運営が求められています
- ピュアAndroidに近いOSを採用しており、Googleのセキュリティ基準に準拠する形で開発されています
ただし、以下の点には注意が必要です:
- セキュリティアップデートの頻度や対応速度は、機種やモデル、地域によって異なります
- OSのメジャーアップデート保証期間は、ハイエンド機種を持つ他社と比較すると短い場合があります
- 過去にはLenovo製PCでプリインストールソフトウェアに関するセキュリティ問題が報告されたこともあります(2015年のSuperfish問題など)
セキュリティを判断する際のポイント:
現代のスマートフォンは、どのメーカーの製品であっても、部品調達から製造まで複数の国や企業が関わっています。特定の国のメーカーだけが危険、または安全ということはありません。
重要なのは、使用者自身がセキュリティ意識を持ち、以下のような対策を取ることです:
- 定期的にセキュリティアップデートを適用する
- 不審なアプリをインストールしない
- 重要な個人情報や金融情報を扱う際は、信頼できるアプリやサービスを使用する
- 定期的にアカウントのセキュリティ設定を見直す
安全性に関する判断は、ご自身の使用環境やセキュリティに対する考え方によって異なります。企業や政府の機密情報を扱う場合と、一般的な日常使用では、求められるセキュリティレベルも異なるでしょう。
日本市場での評価と信頼性
日本市場におけるMotorolaの評価は、コストパフォーマンスの高さに集中しています。
特に「moto g」シリーズは、手頃な価格でありながら日常使いには十分な性能を持つことから、格安スマホ市場で人気を集めています。大容量バッテリー、デュアルSIM対応、直感的なジェスチャー操作「Motoアクション」なども好評です。
一方で、カメラ性能やOSアップデートの頻度については、ハイエンド機種を持つ他社と比べるとやや物足りないという声もあります。ただし、これは価格帯を考えれば妥当な範囲といえるでしょう。
信頼性については、日本国内に「モトローラ・モビリティ・ジャパン合同会社」が存在し、サポート窓口が整備されています。製品には保証が付いているモデルもあり、アフターサポート体制は一定程度整備されています。
実際のユーザーの口コミを見ると、「バッテリーの持ちが良い」「動作が快適」「コスパが良い」といった肯定的な評価が多く見られます。一部には指紋認証センサーの故障事例なども報告されていますが、これは他のメーカーでも起こりうる個体差の範囲内といえるでしょう。
まとめ
Motorolaの国籍と歴史、そして品質・安全性について詳しく見てきました。最後に重要なポイントをまとめます。
Motorolaは1928年にアメリカで創業された老舗通信機器メーカーで、世界初の携帯電話を開発するなど輝かしい歴史を持っています。しかし、スマートフォン時代への対応に遅れ、2011年に企業を分割し、携帯電話事業であるMotorola Mobilityは独立しました。
2011年にGoogleが特許取得を主な目的として約125億ドルで買収しましたが、わずか2年半後の2014年には中国のLenovoに約29億ドルで売却されました。これにより、現在MotorolaはLenovoグループの傘下にありますが、本社はアメリカに置かれ、米国法人として運営されています。
製造は主に中国で行われていますが、設計・開発は世界各地で行われており、ピュアAndroidに近いOSを採用しています。セキュリティアップデートも定期的に提供されていますが、その頻度や対応速度は機種によって異なるため、購入前に確認することをおすすめします。
安全性については、完全にリスクがゼロとは言えませんが、これはどのメーカーの製品にも当てはまります。重要なのは、ご自身の使用目的やセキュリティに対する考え方に基づいて判断することです。一般的な日常使用であれば、適切なセキュリティ対策を取ることで、安心して使用できる製品といえるでしょう。
日本市場では特にコストパフォーマンスの高さが評価されており、手頃な価格で快適に使えるスマートフォンを求める方には検討する価値がある選択肢となるでしょう。
スマートフォンを選ぶ際は、企業の国籍だけでなく、自分の使用目的や予算、求める機能、セキュリティへの考え方などを総合的に考慮することが大切です。Motorolaの製品が自分のニーズに合っているかどうか、この記事を参考に検討してみてください。

